 上野公園の動物園につながる大きな通りには、桜並木と交番と売店が並び、鳩が飛び交っている。春の桜が一番良い季節には歩けないほどの人で溢れ返るこの道も、撮影したオフシーズンである暑い時期にはのんびりしている。売店のない上野公園なんて、模擬店のない学園祭のようなものだ。やはり無くてはならない存在である。小さい頃、上野動物園に連れて行ってもらったことはほとんど無かった。それだけに一度行ったときの印象は大きく、幼稚園生の頃に行った上野動物園でお土産にと買ってもらったキリンのぬいぐるみが今でも残っている。
スナップには小さいカメラか、AFカメラか、音のしないカメラがやはり有効である。このローライ35は小さくて目立たず、レンズシャッターで音も小さい。距離は目測合わせなので、この手の撮影に向いている。つまり撮影者はファインダーを覗いてピント合わせする作業から開放されているのだ。欠点と思われがちな目測合わせだが、ポジティブに考えればなまじ距離計が付いているよりも撮影にそのものに集中できるという利点に変わる。
二眼レフのローライフレックスで有名なローライ社が開発したコンパクトカメラの元祖である。設計者はハインツ・ヴァースケというインダストリアル・デザイナーで、その後もローライ社においていくつかの傑作を残した。
このカメラは画期的な小ささが売り物だけではなく、付いているレンズも以下の4種類が用意されている。テッサー、トリオター(カール・ツアイス製)、クセナー(シュナイダー製)、ゾナー(ローライ製)。
当初はテッサーモデルと、普及版であるトリオターモデルだけであったが、その後、ローライ社が安い人件費を求めてシンガポール工場に製造拠点を移してから、クセナー、ゾナー付きモデルも出来、テッサー、トリオターレンズもライセンス生産となった。
ローライ35は、最小化を目指したため、距離計を内蔵するスペースが無く、ピントは目測で合わせる。そのかわり、ファインダーはカメラの小ささの割には大きく、撮影はしやすい。レンズは沈胴し、コンパクトにまとまるが、その操作にはちゃんと作法があり、守らないとカメラを破壊する。そんな設計者ヴァースケの仕込んだ小さな”からくり”も楽しみたい。
筆者は個人的にテッサーの中庸をゆく描写とトリオターの抜けの良い描写が好きでよく持ち出す。ローライ35の目測撮影を怖がる方もいらっしゃるようだが、このテッサーはF8程度に絞って大体距離を合わせればほとんどピントを外すことはない。ましてサービスサイズ程度にしかプリントしないのであれば、心配するだけ損である。完成度の非常に高いカメラである。どんどん使ってほしい。
|