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亀山湖ボーズ

HOME > KANROKANRO > BASS > 1999年5月その4

 一匹釣れた。これは大きな自信になり、釣れなかったらバス釣りからの撤退も辞さず、とまで考えていた自分の中の「何か」が弛緩した。ここでワタシが走った行動が、「ギアの充実」であった。上州屋へ通うのが頻繁になり、SHIMANOのカタログを取り寄せたり、落ち着かない。ウィンドウのなかでリールが怪しく光ってワタシの購買意欲を掻き立ててきた。バスを釣ってから次の釣行まで2週間ある。この時間がワタシに「リールを買え」と言っていた。言っていたというよりも言わせた、の方が正しいか。

 シマノ カルカッタ100 24,000円

 リールを見てバスが食いついてくるわけではない。リールへの投資よりもルアーへの投資の方がどちらかというとスジが通っている。それでもリールを買わせたのは、どうしようもないワタシのカメラ所有欲に似たどろどろとした意識であった。クラシックカメラを買う人間がメカメカしたリールに走るのは、どこか当然の成り行きにも思えた。

 1999年5月23日。この日は明古釣り部での亀山湖釣行の日だった。ボート屋はかの江口洋介でも有名な「フィッシングコテージつばきもと」。皆、気合いが入っていて、前の晩から行って午前3時頃からオカッパリで投げはじめてしまおう、と、ヤル気満々である。ワタシは急遽店の都合で車が使えなくなり、MANABUさんの車に乗せていってもらう事になった。HIDEさん、KENTAくんたちとは現地で会おう、ということになっている。

 前の日の午後11時半過ぎ、MANABUさんからTEL。「もうすぐ着くと思うから、用意しておいて」そうか、となると亀山へ着くのは2時過ぎかな?ちょっと中途半端な時間になっちゃったな。早ければ現地で寝られるし、遅けりゃ家で少し寝てから出られたのに…。これはほぼ徹夜になりそうだ。

 日付が変わり、23日午前12時過ぎ、MANABUさんがスプリンターのワゴンに乗って甘露書房前まで到着。「道がわからないから、甘露さん、運転してよ」ということで、この道中はワタシが運転する事になった。乗せてもらっている分、運転くらいするのはアタリマエだよね。

 道はもちろん空いている。1時過ぎには姉崎袖ヶ浦ICの手前、市原SAに差掛り、ここで休憩していく事になった。ラーメンを食べてもまだ2時前。「3時頃ここを出ようか」と相談し、仮眠を取る事になった。ワタシが慣れない荷台で横になるも、全然眠くならない。「何処でも寝られるのはほとんど特技に近いよ」と豪語するMANABUさんは、さすがに5分で高いびきである。うらやましい。うとうとしたかしないかのうちに午前3時のアラームが鳴る。よし、出発しよう。

 道中、7月から公開のスターウォーズ、エピソード1の話題になった。なんでも6月終わりには先行オールナイトがあるそうで、「それに行っちゃおうかなぁ」とかなり盛り上がっている。「オレは映画館で見られないかもしれないな」というと「スターウォーズをビデオで見たって面白さは半分以下になっちゃうよ。だめだよー、そんな事じゃ」と叱られてしまった。「面白くなかったら入場料1,800円全額補償するから行ってきなよ」そこまで言うかなー。もはやスターウォーズ教の信者といった方が近い。

 4時少し過ぎに亀山湖のつばきもと駐車場に到着。そばまで行こうとすると真っ暗な中に警備員。先の駐車場は満杯だから手前の専用駐車場へ停めてくれ、ということらしい。最初見たとき正直ぎょっとした。こんな時間に…と思ったが、すでにそれだけの人が来ているということだろう。恐るべき人気の高さだ。

 あたりは夜明け前の底知れない静けさに包まれている。空は濃い藍色。うっすらと霧が漂う。音 を立てるのも申し訳なく思える。出来るだけ静かに車のトランクを開け、道具を取り出すといそいそと湖畔へ向った。

 つばきもと前の湖畔。まだあたりは暗いままだ。それでも湖面は「いきもの」の気配でいっぱいだ。つばきもとのボート桟橋のそばでは盛んにばしゃばしゃとバスが暴れている。爆釣の予感で頭がいっぱいになる。これなら釣れない方がおかしい、そんなことまで思った。徹夜の眠気など吹き飛んでしまった。

 目を凝らしてみると先行者が2,3人すでに投げている。やっぱり居るんだなー。とりあえずルアーを投げ込みたい。投げればすぐに食いついてきそうだ。タックルを用意しているうちにだんだん明るくなってきた。うーん、何処かで見たような人だなぁ。あ。誰かと思えばKENTAくんじゃないか。3時過ぎから投げているという。すごい気合だ。まだ釣れていないというが、ボイル(ベイトフィッシュをバスが捕食すること)もたくさん起きているこの時間帯ならすぐに釣れそうに思える。ボイルなんて言葉では知っていたが、目の前で起こっているのを見るとなかなかの迫力だ。命の力強さを感じる。

 今日がカルカッタ最初の日だ。何を付けて投げようか、とわくわくする。やはりこの間釣れた組み合わせを付けてみた。常吉リグに常吉ワーム。投げ込む。あ。やっぱり最初は慣れない。まるっきり左の方へ行ってしまった。引く。あ。引っかかった。ぐいぐい…、ぶつっ。あれ?切れてしまった。なんだか縁起悪いなぁ…。バスのボイルが頻繁に聞こえるようになってきた。慌てて仕掛けを付ける。もどかしい。投げる。釣れない。投げる。釣れない。「ばしゃっ」え?あ。KENTAくんにかかった。お。釣れたねー。いいなー。ルアーは?グラブ?そうかぁ。

 意地になって投げるもアタリさえなし。時間は過ぎて行き、もうすぐ5時だ。つばきもとで泊まっていたと思われるお客も続々と出てくる。駐車場には一時エレキセットを下ろす作業で混雑もピークを迎えようとしていた。改めて見てみるとすごい人の数だ。軽く100人。150人くらいは居るだろう。受付まで長蛇の列を並ぶ。千葉の山奥で朝5時という早朝の時間の光景としては似つかわしくないラッシュ状態。景色は素晴らしいものの東京を引きずって来てしまったようで、少し興も冷める。隊長のHIDEさんは5時少し前に到着。

 5時をかなり過ぎたところでやっと出船。日は昇り、湖面の静けさはクモの子を散らしたようなボートの大軍によってかき消され、バスのうるさいまでの気配はパタっと無くなった。

 今回はMANABUさんと同船。彼はまだバスを釣っていない。なんとかして釣ってもらいたい、と思うものの、こればかりはバスの気持ち次第。桟橋を離れたクモの子たちは所せましと岸際に張り付いている。このプレッシャーの異常な高さはどうだろう。とりあえず開いている岸際に付けてT.D.バイブレーションプラグを投げる。T.D.はチームダイワの略。ルアーマガジンでも人気の高いものと評判が良い、と書かれていたのでカルカッタと一緒に買ったものだ。投げるとビューっと良く飛ぶ。これは気持ち良い。巻くとブルブルとロッドに感触が伝わる。水中で小刻みに震えながら泳いでいるようだ。投げて巻くのが楽しいルアーだが、アタリは全くない。と、隣りで3人乗りの船が釣った。なんだ、また3人組か。どうも3人組がとなりに居る事が多い。3人で乗る事が別に悪いわけじゃなくて、3人組のそばではなぜかなかなか釣れないというワタシのジンクスが悪いのだ。なんかゲンが悪い。アタリもないし、この間ワタシが釣ったのむらシャローへ行ってみましょうかい。と、ボートをのむらボートのそばへ進めてみてビックリ。あ。二週間前よりも減水している…。岸はかなり広がり、水を沖へ追いやっている。この間釣れた場所は浅すぎて魚の居る場所ではなくなってしまった。がっかりしながらも常吉を投げるが、やはり駄目。MANABUさんは何も言わないが結構頻繁にルアーを変えて投げている。常吉ばかり投げるワタシとは違い、スピナベを投げていたと思ったらクランクを投げたりして、ロッドを一本しか持っていないわりには手間を厭わない。しかし、二人ともアタリのないのは変わりなかった。

 「戻るか…。」結局つばきもと周辺へ戻る事にした。つばきもと桟橋反対側の少しえぐれたところにHIDEさんとTOMOMIさんチームのボートがいた。ストレートワームをノーシンカーで投げていると、さっきからアタリがあるという。「朝一で変なワームを投げていた人がここで立て続けに3匹釣ってさ。その人が釣れなくなったんで場所を移動したから入ったんだよ。」その人は何で釣ってたの?「変なビロビロした宇宙人みたいなワームだったよ」ブラッシュホグかな?「で、音を立てないように、ってしてたらおっきいバスが何匹もすーっと入ってきてさ。ノーシンカーで狙ってんの」それじゃ隣りで釣ってます。

 すると「あ。来たっ」とHIDEさん。「えっ」と思い、見てみるとロッドがしなっている。あ。かかったんだ!…釣れた。バスだ。いいなー。

 スピニングリールに4Ibのフロロラインでノーシンカーの仕掛け。これで立て続けに2回のバラシと2回釣り上げた。うーむ、さすが釣り部部長。この日の為に研究してきたなぁ。

 昼も近づいてきた。アタリは一度もない。御蛇ケ池のおじさんが言っていた「ワームのノーシンカー」ってこんなに威力のあるものだったのか。MANABUさんはさっきからボートでひと寝入りしている。さすが何処でも寝られる特技を持つだけに真っ昼間のボートの上でも高いびきだ。なんか釣れる気がしないなぁ。一度でもこんな事を思ってしまうと駄目だ。気持ちは裏へ裏へ回り出す。気合が抜け、どうでもよくなってきてしまう。

 昼は長崎キャンプ場というところでTOMOMIさん率いる釣り部食事係がカレーを作ってくれるという事になっていた。MANABUさんはもともと食事を作る気でいたからか、さっさとボートをおりてアタリなしのまま納竿してしまった。長崎キャンプ場までボートで移動。食事はまだ当分出来ないということなので、ここで釣りを続行した。しかし一度切れた緊張はもとに戻らない。HIDEさんはここでもシェードを狙ってもう一匹追加した。うん、さすがだ。

 アタリが一度もないまま、眠気も出てきた。食事が出来たという知らせに腹がぐーぐー鳴っている事に気が付き、さっさと納竿してしまった。結局カルカッタのデビューはボーズから始まってしまった。いつもの事であるが…。

1999年5月記


 
 

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